スクールガールストライカーズ SCHOOL GIRL STRIKERS Animation Channel

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スクールガールストライカーズ Animation Channel 最終回直前スタッフ対談

MEMBER アニメ監督 錦織博 シリーズ構成 吉岡たかを シナリオ監修 石山貴也

TALK

01 『スクスト』に関わってみて

TVアニメ『スクスト』に関わられた感想をお願いします。

監督の錦織です。これまでの経験でもそういうことが多かったんですが、プライベートでよく目にしていたタイトルのお仕事を、何かに引き寄せられたかのようにオファーを受けることがあるんです(笑)。『スクスト』も、アプリのCMをよく見かけていて、「これだけ女の子がたくさん登場する作品だと、アニメで描くのは大変そうだな…」なんて思ってました。そうしたら、アニメの監督のお話を頂いて。「ぜひ、よろしくお願いします」と(笑)。

脚本、シリーズ構成の吉岡です。私の場合は、実際にお仕事としてオファーを受ける1年くらい前から、「スクールガールストライカーズというアプリゲームがあるので、プレイしておいてくださいね」と、某プロデューサーから言われてたんですよ。その時は「なんで私に宣伝してくるんだ?」なんて思っていたんですが、いま考えてみれば伏線だったんですね。それで、個人的にゲームで遊ばせて頂いてたんですが、後に正式に「アニメのお仕事をお願いします」というオファーが(笑)。関わることになってまず思ったのは、監督もおっしゃってましたけど、こういうゲームの通例として、とにかくキャラクターの数が多いので、どうやって描き分けていけばいいのかと頭を悩ませましたね。あと、これは先にゲームを遊ばせて頂いていたから分かってはいたんですが、とにかく原作であるアプリゲームのシナリオが、シリアスとギャグの振れ幅がとても大きな作品であると。どういう方向性で物語を作っていけばいいのか、かなり難しい問題でした。

アニメではシナリオ監修という立場で関わらせていただきました、石山です。アプリゲームの方では、ディレクターとシナリオを担当しています。私が『スクスト』のアニメ化のお話を聞いた時には、もうある程度、企画が決定していた段階だったんですが、原作サイドのスタンスとしては、あくまで我々はアニメに対しては素人ですから、この作品をどう切り取って、どう料理して頂くかはアニメ制作のプロの皆様におまかせしますという感じでした。ですから当初は、正直なところ所々で監修作業に混じればそれで大丈夫かな…くらいの軽い気持ちでした(笑)。ところがいざ蓋を開けてみれば、毎週行われていた会議には必ず参加していましたし、脚本でも参加させて頂くことにもなって…。絵コンテも全話、チェックさせて頂きましたし、毎週のアフレコにもほぼ顔を出させてもらったりと、思っていた以上に、ガッツリ制作に踏み込ませて頂きました。

『スクスト』のアニメを作ろうとなった時、原作にも核となるストーリーはあるんですが、それ以外にもイベント的なショートエピソードもたくさんあって、それらをどうすくい上げていけばいいのか…皆で話し合っても、それこそ色んな意見が出てきまして、なかなか固まらなかったんです。シリアス展開の多いメインシナリオと、いわゆる「茶番劇」と呼ばれる事もあるサブシナリオの、どっちを主軸に据えていくかという事については、スタッフの中でもかなり意見が割れました。プロデューサー陣や吉岡さんとも、かなり話し合いました。

監督もそうですし、何人かいるプロデューサーや、もちろん私自身もそうなのですが、皆が思い描く『スクスト』像が、それぞれあるんですよね。集まって話し合っても、まったく方向性がまとまらない(笑)。とにかく、準備段階にかなり時間をかけました。結果的には、監督がやりたいと思う事を核にしながら、他の制作陣の意見も取り入れて、バラエティ感あふれる作品にできればいいんじゃないかという話になりました。

企画の段階では、まだ石山さんや原作サイドは交えずに、まずは自分達のやりたい事をまとめようと。何も決めないまま話し合いに臨んでもしょうがないと思いましたので。ですから、石山さん達に企画をお見せするまで、けっこう時間がかかったんですよ。

そうだったんですか!?

最初に企画をお見せする時、実はかなり緊張してたんですよね(笑)。

我々としては、先程も言いましたけど「アニメはアニメのプロにおまかせする」というスタンスでしたから(笑)。ですから、皆さんが「これで!」とおっしゃるのであれば、従おうと。……あれ、でも何か色々と口を出したような記憶も…。

ストーリーの軸については、話し合いましたよね。それこそアニメにおける「世界線」は、どこに持っていけばいいかとか。

ゲームをプレイして下さっているユーザーの皆さん一人一人に、それぞれの『スクスト』の世界があるというのも、ゲームを作っていて実感がありましたので、どうすれば、色んな人の需要に応えられるんだろうかと。全13話という尺は始めから決まってましたから、要素を全て網羅することはできませんし、取捨選択はどうしても必要でした。

倒すべき敵として、オブリやモルガナを登場させたのは、そうした方が物語として展開させやすいだろうという考えがあったんです。ただ、それだけではゲームの面白さを昇華できるものではないという思いもありました。より混沌とした…多岐にわたった要素を入れ込まないと、面白くならないなと(笑)。全体の構成も大切ですが、もっと1話1話の要素を大切にして組み立てていきたかったんです。あと、最初に吉岡さんにお願いしたんですが、物語は基本的に学園の中だけで展開していって、その中で、女の子同士の何気ない会話ややり取りがあるという、そういうノリも大事に描きたいと。実際、13話まで作ってきましたが、実はいまだに正解の見えない難しさがあります。でも、そこが『スクスト』の魅力でもあるんだろうなと。

原作が漫画なんかの場合ですと、いわゆる物語の「縦糸」があるので、それを基準にできるんですが、この作品の場合はそうもいかない…。ならいっそ、何人かいらっしゃる脚本家の皆さんに、それぞれ自由に皆さんのセンスで書いて頂いて、色んな『スクスト』が出来上がってもいいんじゃないかなと。思惑通り、個性的な話が出揃いましたので、最後はそれを自分で引き受けてまとめればいいかなと(笑)。バラエティ感は出たんじゃないでしょうか。

脚本を色んな人に書いてもらおうという流れになったので、恐る恐る手を上げてみたんです。「差し出がましいようですが、もしよければ私にもお手伝いを…」みたいな。アニメ脚本への興味もあったのですが、自分が参加することで作品のバラエティ感に少しでも華を添えることができたらいいなという思いもありました。そしたらすごくあっさり「ぜひお願いします」と決まってしまって(笑)。

普通に脚本のローテーションに組み込まれていきましたよね(笑)。

なのでまずは「脚本 書き方」で検索する所から始めました(笑)。「インデントは3文字空けるのか…1枚は200文字換算で計算するのか…」なんて、ごくごく基本的なことから(笑)。そのくらいアニメ脚本については知らない状態だったので、「やばい、これ大丈夫か」とあたふたしながら吉岡さんの書かれた1話の脚本を熟読したり、脚本に使われてるフォントと同じものを手に入れてみたり(笑)。実際に担当させて頂いた2本(#04、#10)がアニメ映像になって感じたこととしては、もっと声や映像の力に頼っていいんだなと(笑)。普段のゲームではテキストベースなので、どうしても文字で説明しすぎちゃうんですよね。台詞ひとつとっても、完全に状況を説明しきれなくても映像やキャストの皆さんの演技で補完して頂けるんだという事が分かりました。勉強になりました!

最初に書いて頂いた4話のシナリオを読ませて頂いた時、キャラごとの細かな台詞のニュアンスだとか、ツッコミのノリなんかをとっても、「やっぱり本家は流石だな」と思いましたよ。

やっぱりオリジナルは違うなぁと。

いえいえ(笑)。きっと後できちんと絵コンテでアニメ用に整えてもらえるんだろうと、僕も自由に書かせてもらいました。でも監督から、「あえてそのまま、ノリを残して映像化しました」と言われて(笑)。ですから、他の話数と比べても全体的にセリフ量が多いんですよね。

声優さん達も、心なしか皆さん早口気味でしたよね(笑)。

それでもきちんと形になっていたので、そこは流石はプロの演出だなと。

確かに、普段ではあまりやらないような密度ではありましたね。でも、せっかくなのでなるべく脚本の味を残したかったんですよ。

正直自分でも「このくだりはなくても大丈夫だったな」と思うような場面もあって、そこはまぁ、うまくカットして頂けるだろうと思ってたんですが…ほぼそのまま残っていて、うひゃあってなりました!(笑)

結果的には「これぞスクスト」というような、バラエティ感は出せたと思いますよ。アニメ用にオリジナルエピソードを書いて頂けた事で、他の脚本家の方々も4話のシナリオを見て「石山イズム」の振り幅を学んだようなところもありますね。

あと、気を付けた事としては、ゲームだとストーリー部分には声は付いてないので、文字で読んで面白いネタと、実際にキャストさんが喋って面白いネタって違うというのは意識しました。具体的に言うと、例えば4話の「確認事件」という言葉は、実際にサトカが声に出す事で、面白くなるんじゃないかなと思って入れてみたものだったりします。面白かったと思います!

思い出に残った作業

担当されたお仕事の中で、強く思い出に残っている作業などありますか?

『スクスト』では、自分自身がこだわるというよりも、スタッフの色や個性を纏めていく作業に徹していた部分があるんです。なので…特定の作業に入れ込む余裕がなかったというのが本音かもしれないですね(笑)。今回、色んな方に脚本をお願いして、バラエティ豊な本が集まりましたから、自分自身で担当する話数は、どうしても物語を進める役割を担うことが多くて。そんな中でも、キャラクターが出揃ってきた物語後半で、例えばオディールや降神三姉妹が出て来る話は、書いていてとても楽しかったです。オディールは、けっこう力を入れて書きました(笑)。

オディールや降神三姉妹が後半に出てくるという構成が決まって、いざオディールが登場するという事になった時に、彼女って設定自体が色んなパロディ要素を含んだキャラ造形なんですよね。それまでは意識的にストーリーを進行させる部分と、ある意味ギャグやパロディのような部分は比較的分けて描いていたんですが、彼女の登場でそれらがナチュラルに混ざり合ってしまって(笑)。彼女を物語に組み込んでみてから初めて「ああ、もっと普通に混ぜてしまって良かったんだ…」なんて気付かされたんです。なので後半の展開では、シリアスよりのエピソードの中にも、パロディ的な要素を自然に入れ込むことが出来てるんじゃないかなと思いますね。そういう混沌さが『スクスト』っぽさなのかなと(笑)。

そもそも『スクスト』のアプリを開発していた当初は、まず26人の登場キャラクターを作って、そのキャラクター達がアプリゲームという場で、どうやったら一番魅力的に見せられるかという視点で、シナリオや設定を考えていきました。現在のアプリの『スクスト』は、その積み重ねの結果です。なので『スクスト』のベースは、やっぱりキャラクターありきなんです。今回、アニメ化される事でシナリオや監修作業に関わらせて頂きましたが、そこでも「彼女達のキャラがブレないようにする」ということは、特に意識していました。ただ、「これ、ちょっと違うな…」と感じた部分でも、脚本や演出の味として面白くなっていると思えば、ノリや勢い重視でそのままOKを出したりもしましたが(笑)。